キッチンカーの保健所許可を徹底解説|設備基準と申請の流れ
- キッチンカーの飲食店営業には、車両を確認する管轄保健所の営業許可が必ず必要。
- 給水タンクは40L・80L・200Lの3段階が目安で、容量が大きいほど扱えるメニューが増える。
- 申請には食品衛生責任者の資格と、仕込み場所(営業拠点)の確保が前提になる。
- 2021年の食品衛生法改正でHACCPに沿った衛生管理が全事業者に義務化された。
- 許可は保健所ごとに必要で、営業する地域が変われば別途申請がいる場合がある。
キッチンカーの保健所許可とは?まず知っておきたい全体像

キッチンカーの保健所許可とは、車内で調理・提供する食品営業について、管轄の保健所が施設基準を満たすと確認したうえで交付する「飲食店営業許可」のことです。
私が最初に混乱したのは、許可を出すのは国でも自治体の別部署でもなく「保健所」だという点でした。しかも申請先は、車をどこの地域で使うかで変わります。
営業許可が必要な理由と根拠
食品を調理して売る以上、無許可営業は食品衛生法違反になります。
根拠は食品衛生法。飲食店営業は許可業種に指定されていて、これは店舗でもキッチンカーでも同じ扱いです。
消費者庁・厚生労働省が所管する法律なので、詳しい条文は下の出典で確認できます。
保健所の許可と食品衛生責任者の関係
営業許可を取るには、施設ごとに食品衛生責任者を1名置く必要があります。
つまり「設備が基準を満たす」だけでは足りません。人(責任者)と車(設備)の両方が揃って初めて許可が下ります。
資格は、各都道府県の食品衛生協会が実施する養成講習会を1日受ければ取れます。調理師や栄養士の資格があれば講習は免除されます。私はクレープ屋なので、この1日講習で取得しました。
2021年の食品衛生法改正(HACCP対応)で変わったこと
2021年6月から、原則すべての食品事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務づけられました。
HACCPは、調理の工程ごとに危ないポイントを決めて記録・管理する仕組みのことです。難しく聞こえますが、小規模なキッチンカーは「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」でよく、業界団体の手引書に沿って温度や洗浄を毎日チェックする程度で対応できます。
あわせて営業許可制度も見直され、届出・許可の区分が整理されました。制度の全体像は厚生労働省の解説ページが分かりやすいです。
キッチンカーの保健所の施設基準を満たす設備一覧
キッチンカーの施設基準の中心は、手洗いと器具洗浄ができるシンク、十分な容量の給水・排水タンク、そして食品を安全に扱える収納・作業スペースです。
ここが一番つまずきやすいところ。しかも保健所ごとに細かい運用が違うので、必ず事前相談で確認してください。
営業許可に必要な設備の基本項目
最低限そろえるべき設備は共通しています。
- 手洗い専用と器具洗浄用に分けられるシンク(複数槽が求められることが多い)
- 給水タンクと排水タンク(同容量が原則)
- 食品を保管する冷蔵・冷凍設備
- ふた付きのごみ容器と、汚れが落としやすい床・壁の内装
- 食品や器具を清潔に保てる収納スペース
正直、内装は後から直すと余計な費用がかかります。車両製作の段階でシンクとタンクの位置を決めておくのが結局いちばん安上がりでした。
シンクと給水タンクの基準(40L・80L・200L)
給水タンクは40L・80L・200Lの3段階で運用され、容量が大きいほど扱える調理の幅が広がるのが全国的な運用の目安です。
これは2021年の営業許可制度の見直しで、多くの自治体が採用している考え方です。ただし最終的な線引きは管轄保健所の判断なので、下の表はあくまで一般的な目安として見てください。
| タンク容量 | 想定される調理 | シンクの目安 |
|---|---|---|
| 40L | 簡単な調理・盛り付け中心(既製品の温め、包装食品の提供など) | 1槽+手洗い |
| 80L | 1品程度の簡単な調理と提供 | 2槽+手洗い |
| 200L | 大量の水を使う本格的な調理・複数メニュー | 2槽+手洗い |
給水タンクの容量で変わる提供メニューと営業範囲
やりたいメニューから逆算してタンク容量を決めるのが失敗しないコツです。
私のクレープは生地を焼いて、その場でクリームやフルーツを盛る。洗い物もそれなりに出るので、80L以上を前提に車を選びました。40Lだと途中で水が尽きるのが目に見えていたからです。
車両の選び方・製作・改造時の注意点
車両は「基準を満たす内装に改造できるか」を最優先に選ぶべきです。
軽トラベースは初期費用を抑えやすい反面、タンクとシンクを積むと調理スペースが一気に狭くなります。私はここで何度も間取りを描き直しました。
中古車や既製のキッチンカーを買う場合でも、その車が自分の管轄保健所の基準に合うかは別問題です。購入前に写真と図面を持って保健所へ相談するのを強くおすすめします。
保健所への営業許可申請の流れと必要書類
申請の流れは「事前相談→書類・電子申請→車両の確認検査→許可証の交付」の順で進みます。
この中で一番大事なのは、最初の事前相談。ここを飛ばして車を作ると、基準に合わず作り直しという最悪のパターンになります。
事前準備と保健所への事前相談
車を用意する前に、まず管轄保健所へ相談に行くのが鉄則です。
相談では、扱う食品・メニュー、仕込み場所、車の設備図面を見せて「この構成で許可が下りるか」を確認します。私は図面段階で「手洗いの位置を変えて」と指摘され、製作前に直せて助かりました。
電子申請・書類提出のステップ
営業許可の申請は、全国共通の「食品衛生申請等システム」からオンラインで行えます。
アカウントを作り、必要事項を入力して申請すると、後日、書類の原本提出と車両確認の日程調整に進みます。
車両の確認検査で見られるポイント
車両確認では、図面どおりに設備が作られ、実際に水が出て排水できるかを現地でチェックされます。
- 給水・排水タンクが規定容量あり、実際に給水と排水ができるか
- シンクの数と、手洗い設備が独立して機能するか
- 冷蔵庫の温度が保たれているか
- 内装が洗いやすく、清潔に保てる構造か
- 食品衛生責任者の資格を証明できるか
検査は「作った通りに動くか」を見る場。図面と現物が食い違うとその場で指摘されます。
申請に必要な書類チェックリスト
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 営業許可申請書 | システム入力または窓口提出 |
| 営業設備の大要・図面 | 車内のシンク・タンク・冷蔵庫などの配置図 |
| 食品衛生責任者の資格証 | 講習修了証や調理師免許など |
| 車検証の写し | 営業に使う車両のもの |
| 仕込み場所の書類 | 自宅以外を使う場合は使用許可などが必要になることがある |
許可取得にかかる費用・期間・スケジュールの目安

許可の手数料は自治体ごとに条例で定められていて、飲食店営業でおおむね1万6千円〜2万円前後が目安です。
ただし金額は管轄で異なります。正確な額は必ず申請先の保健所か自治体サイトで確認してください。ここでは私が調べた範囲の目安と、実費のリアルを書きます。
手数料など費用の内訳
保健所に払うのは主に営業許可の申請手数料です。
これに加えて、食品衛生責任者の養成講習が全国的に1万円前後かかります。手数料自体は開業費全体から見れば小さい部分です。
申請から交付までの期間
事前相談から許可証の交付までは、書類と車両に不備がなければおおむね2週間〜1か月ほどが目安です。
車両確認の日程が混み合う時期は、さらに時間がかかります。オープン日から逆算して、最低1〜2か月の余裕を持って動くのが安全です。
開業に必要な資金総額のシミュレーション
私自身の開業準備で組んだ資金内訳は、総額でおよそ400万円です。
これは実体験にもとづく私個人の見積もりで、車両の選び方や中古か新車かで大きく変わります。参考として内訳を公開します。
| 項目 | 目安金額 |
|---|---|
| 車両本体・改造(シンク・タンク・電源込み) | 約250万円 |
| 調理機材(クレープ焼き器・冷蔵庫など) | 約60万円 |
| 食材・容器などの初期仕入れ | 約20万円 |
| 許可・講習・登録などの諸手続き | 約5万円 |
| 当面の運転資金 | 約65万円 |
仕込み場所(営業拠点)の確保と取り扱える食品の制限
キッチンカーは車内だけで完結できないことが多く、別途「仕込み場所(営業拠点)」の確保が許可の条件になる場合があります。
ここは見落とされがちですが、私が調べていて一番ヒヤッとしたポイントです。
仕込み場所に求められる要件
食材の下処理や大量の仕込みは、許可を受けた施設で行う必要があります。
タンク容量が小さい車ほど、車内でできる調理が限られ、仕込み場所への依存が大きくなります。自宅の台所をそのまま使えるとは限らず、別途その場所の営業許可が必要なケースもあります。
どこまで車内で、どこから仕込み場所で行うか。この線引きは事前相談で必ず詰めてください。
取り扱える食品・メニューの区分と制限
提供できるメニューは、車の設備と給水タンク容量に応じて保健所が判断します。
申請時に「クレープ」「唐揚げ」など具体的な品目を届け出て、その範囲で営業します。届け出ていないメニューを勝手に追加するのは違反です。
生食・加熱など調理内容による違い
生肉・生魚など、加熱しない食品の提供は基準が厳しく、車内では認められないことが多いです。
加熱してすぐ提供するメニューは比較的通りやすい。私のクレープも「その場で焼いて提供」なので、この点は有利でした。刺身や生野菜を大量に扱うなら、設備要件がぐっと上がると考えておいてください。
複数の自治体をまたぐ営業と許可の更新手続き
営業許可は保健所の管轄ごとに有効なので、管轄が違う地域で営業するには、その地域の許可が別途必要になる場合があります。
「一つ取れば全国どこでも」ではない、というのがキッチンカー特有の落とし穴です。
保健所ごとに許可が必要になるケース
隣の市や県のイベントに出るとき、その場所を管轄する保健所の許可が要るかは事前確認が必須です。
広域での運用は自治体によって扱いが分かれます。出店先が決まったら、その地域の保健所に「うちの許可で出られるか」を必ず問い合わせてください。
営業許可の有効期限と更新の流れ
飲食店営業の許可には有効期限があり、期限が切れる前に更新申請が必要です。
有効期間は5〜6年程度で設定されることが多いですが、期間は許可証に記載されます。自分の許可証の期限を必ず確認し、切れる前に更新してください。更新時にも車両確認が入る場合があります。
